前回、中山間村地域において過疎化・高齢化対策は焦眉の急であることを、将来推計人口の数字を使って書いてみました。わずか10年後のことですから、ここ2~3年が勝負になるでしょう。危機感は目の前といった感じです。
では、具体的な対策として何が考えられる、かです。実に単純にして、最も難しい「魅力のある街づくり」の問題です。
確か総理府の世論調査だったと思いますが、将来的に都会に住みたいかそれとも田舎に住みたいかという設問に、田舎に住みたいと言う自然派は3割ぐらいで、圧倒的に都会志向が強かったように記憶します。
何故かという理由は殆ど忘れてしまいましたが、お金の問題は別にしても、映画演劇美術などに接する機会が少ない、買い物などで魅力あるところが少ない、病気になったときの医療体制の問題などが理由に上げられていたように、うっすら記憶しています。刺激が少ないんですよね。
普段は都会に住んで、喧騒に疲れると田舎に行って自然に触れてみたい、といった人が多数なのではないか、と思います。
それも山だけより、海がある田舎の方がいいのではないでしょうか?(海無し県である群馬県育ちの私は特にそう思います)。食べ物に関しても、海があるほうに軍配が上がるような気がします。
この延長線上で無理なく「魅力ある街づくり」を考えてゆくしかないと思います。10人に1人くらいが、山間村に住んでもいいと考えている、くらいの状況でしょう。
定住化を推進するにしても、まず街を知ってもらわなければなりません。いきなりフラッと来てその町に住みつくのは「ふうてんの寅さん」くらいです。定住化の対象者となる基本的な数字は、首都圏(通常の首都圏ではなく、東京、千葉、埼玉、神奈川の1都3県を想定。以下同じ)からの日帰り観光客のマーケット規模のように思えます。まずその規模を推定してみましょう。
下仁田町は関越自動車道・上信越自動車道を利用すれば練馬インターから下仁田インターまで105.5kmで67分の時間距離です(道路時刻表)。ここだけの話ですが、実際は渋滞さえなければ50分くらいで着いてしまうのではないでしょうか(時速120キロの気分的巡航速度です)。
日帰り観光の片道の限界時間距離は2時間と言われています。片道2時間範囲なら無理なく、楽しく日帰りで観光ができた、と感じられるそうです(ちょっと無理があるかもしれませんが、日帰り圏は通勤通学の限界点と考えてもいいのではないでしょうか?)。
そうすると、東京都の人口1263万1千人(このうち郡部、島嶼部の人口は8万5千人)、埼玉県の人口707万1千人(ともに平成18年7月1日現在の推計)。合わせて1970万2千人が、大体の首都圏からの日帰り観光客のマーケットになります。
北関東道が全線開通し、圏央道も神奈川県茅ヶ崎市(湘南地域)まで繋がれば、このマーケットはさらに拡大します。
しかし、マーケットは大きいのですが、ここに大きな問題が横たわっています。それは東京都と埼玉県の人口当たり乗用車保有台数が、北関東3県に比べ格段に低いことです。
下仁田町へのアクセスを考えた場合、どうしても自動車を前提に考えざるを得ません(上信電鉄さん、高速バスを運行する西部バスさん、ごめんなさい。でもクルマがないと、定住化するにしても普段の生活に困ってしまいます)。
単純に今年4月末の乗用車保有台数を直近の人口で割ってみると、東京都は321万7千台で25.5%、埼玉県は297万1千台で42.0%。これに対し群馬県は126万1千台で62.4%です(業務用に使われる乗用車などは考慮しておりません)。
東京、埼玉(特に東京近郊)は公共交通機関が発達している上に、駐車場などの自動車保有コストが高いといった事情があります。群馬県のように、日常生活にクルマは必須ではないのです。
(そして、自動車を日常的に使っている人の行動範囲における時間間隔と、そうでない人の感覚には大きな違いがあると思います。)
観光の場合1台に平均2人乗車するとして、単純に計算すると東京都の642万人、埼玉県の594万人、合わせて1236万人のマーケットに縮んでしまいます。
しかしそれでもなお、1000万人以上のマーケットを抱えていると言うのは条件的に恵まれています(夕張市と比較してみてください。7月11日エントリーの「夕張市の失敗」をご参照下さい)。この1%の人が年4回来てくれるだけで、延べ50万人の首都圏からの日帰り観光客になります。
(7月8月の2ヶ月だけで400万人の観光客入込数がある軽井沢町の対象マーケットは新幹線のアクセスがあるだけに東京、埼玉の人口全てが対象になるでしょう。それに群馬県、長野県の人口半分ずつを加えた2180万7千人くらいのマーケットだと思います。この18.3%、約2割、5人に1人の人が7月8月のうちに1度軽井沢町を訪れる計算になります。もちろん同じ人が何度も行く場合もあるでしょうが。)
美味しいものがあって、楽しいことがあって、美しい景色があれば、観光客は来るでしょう。ただ、この3つの要素を絶えずレベルアップしていかなければなりません。地域間競争が激しいだけに、平均より少し上のレベルを最低限キープしなければなりません。
美味しいものは地元の産品を活かした「牛鍋・すき焼き」、「下仁田おでん」を核にして料理のレベルを上げてゆくことです。
イベントは既存のものに創意工夫を加え、町外の人にどう楽しんでもらえるか考えるしかありません。景色は道路沿い、山、川の景観を美しくしていくための努力をするしかありません。
そしてまずは日帰り観光客を増やすことです。多くの人に下仁田町の存在を知ってもらうことです。
下仁田町を知ってもらう方策として、同時にサイバー町民を増加させることです。既存の「ふるさと下仁田の会」の会員を増やし、ウェブマガジンの「しもにたタイムス」をメールマガジン化することでしょう。下仁田町縁故の人が一番のターゲットになるとおもいます。サイバー町民の登録方法、サービスなどは知恵を出していくしかありません。
空き家があれば、低料金で利用できる宿泊施設に転換することも考えなければなりません。そして週末や休日を利用した宿泊客を増やし、徐々に夏休みなどの長期宿泊者を増やしていく方策をとるのが良いのではないかと思います。
下仁田町で一泊して、翌日に軽井沢町に回って帰る、或いは逆に軽井沢町で遊んでから下仁田町に一泊して帰る、といった観光客が増えるよう努力すべきです。
定住化はその先だと思います。
観光客を増やすに当たって最も注意しなければならないのは、観光と日常生活をシンクロナイズさせることです。観光客を増やそうと思って始める、肩に力が入った事業は大抵長続きしません。
地元の人が、美味しいものを食べ、美しい空間を眺めながら豊に暮らしている光景に憧れて、観光客は訪れるのではないでしょうか?そして、その中から、そこに住みたいと思う人が現れるのです。
軽井沢町がブランド化したキーワードは、「別荘」です。各自が勝手に思い描く別荘ライフです。功なり名を遂げた政治家、経済人、文化人などの著名人が別荘を構える土地として軽井沢はブランド化したと思います。決して観光が先ではありません(別荘で過ごすことも観光といえば言えるかもしれませんが、ちょっと違うような気がします)。
もちろん金銭的な意味でなく、地元の人が豊な暮らしをしていなければ、或いはそう思わせなければ、観光地としてブランドを維持し続けるのは難しいように思います。
「こんにゃく」から一般の人は豊かさをイメージするでしょうか?私は否定的です。ですから下仁田町は「こんにゃく」にこだわらないほうが良い、「こんにゃく」の呪縛から開放されたほうが良いと提言してみたのです。
名物料理も「こんにゃく料理」ではなく、地元の特産品も大いに活用できる「牛鍋・すき焼き」を看板に掲げたほうが良いのではないかと思った訳です。
存在を知ってもらうためには、ちょっとあざとい方法ですが、上信越自動車道から見える地点に風船爆弾を復元してみようと言ってみたのです。
生活と観光をシンクロナイズさせ、観光の3要素である、美味しいもの、楽しいこと、美しい景色を作り上げていくことは、地元の生活者にとっても多くの恩恵があるように思います。
次回は、定住を誘う「奥の手」を書いてみたいと思います。
【下仁田町から軽井沢町までの直線距離≒12マイル≒22km】
下仁田町とは何の関係もないんですが、昨日、榛東村で出会ったET。農産物直売所の傍に「非売品」としておいてありました。
蓮だと思います。気持ち悪いからクリックして拡大しないほうがいいですよ。
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